
New Collection Rose Cut Diamond
こんにちは、hum JINGUMAE atelier&shop の岩﨑 (@ikumi_iwasaki)です。
2025年11月19日(水)より、hum直営店および hum ONLINE STORE にて、“Rose Cut Diamond Collection” の新作を発売いたします。

この新しいコレクションは、humが20年の歩みの中で大切にしてきた美意識から生まれました。
ここでは、その背景にあるものをご紹介します。
20年の歩みを経て
2024年10月、humはブランド設立20周年を迎えました。
その節目に、これまでの歩みを一冊にまとめた「20TH ANNIVERSARY BOOK」を制作。
1ページを1年に見立て、20年間の軌跡を綴りました。
制作の過程で、これまでの膨大なデザイン画やアーカイブを振り返る中で改めて感じたのは、「良いものをつくってきたね」という確かな実感。
そこには、時間とともに培われてきた humの美意識と職人技が随所に感じられ、確かに残されていました。
ジョージアンスタイルという原点
私たちは2006年に、「Rose Cut Diamond Collection」を発表しました。
インスピレーションの源は、18世紀から19世紀初頭に実際に作られていた「ジョージアンスタイル」と呼ばれるジュエリーにあります。
静かな気品、不完全さの中に宿る美。
humが大切にしてきた価値観を象徴するスタイルです。
当時のジュエリーに使われたローズカットダイヤモンドは、現代の完璧なカットとは異なり、ひとつひとつに個性があり、素朴な温かみがあります。
180年の時を経てもなお漂う優雅さと風格。
わずかな揺らぎや余白の中にこそ美を見出す、その精神こそがこのコレクションの核です。
ジョージアンジュエリーの特徴
ジョージアンスタイルとは、1714年から1837年頃に見られるジュエリーの様式を指します。
イギリスの王侯貴族や上流階級の女性たちが身につけ、単なる装飾品ではなく、教養や美意識、社会的ステータスを示す手段でもありました。
この時代のジュエリーには、次の3つの特徴が挙げられます。
1. ローズカットダイヤモンドの使用

平らな底面とドーム状の上面を持ち、三角形のファセットが薔薇の蕾のように広がるカットです。
現代主流のブリリアントカットが光を反射して輝くのに対し、ローズカットは光を透過させながら柔らかく輝きます。
キャンドルの灯のような奥行きのある控えめな光が特徴で、温かみのある輝きが好まれました。
2. 伝統技法
フォイルバック/クローズドセッティング

ローズカットダイヤモンドの輝きを引き出すために、石の裏に金属箔を敷く「フォイルバック」は、光を反射させてその輝きをいっそう際立たせる技法です。
底に穴を開けない「クローズドセッティング」と組み合わせることで、独特の奥行きと深みが生まれます。
彫り爪

また、爪をロウ付けするのではなく、地金から削り出した丸いフォルムの「彫り爪」もこの時期特有の造形です。
※「彫り爪」という名前は、職人・貞清が名づけたものです。
3. 素材

当時はプラチナの溶解技術がまだ発明されておらず、主にシルバーやK18が使用されていました。
ルビーやサファイア、エメラルドなどの色石も多く用いられ、やがてダイヤモンドが主流になります。
ダイヤモンド部分にはシルバーを使用することが多く、金と銀の組み合わせが当時のジュエリーを象徴していました。
シルバーは時を経て黒ずむことで、現代のジュエリーとは異なる趣を添えています。
光と影、平面と曲面、硬質と柔らかさ、金と銀など、こうした特徴の相反する要素を自然に共存させ、
過剰になることなく、調和の中で美しさを生み出してきました。
現代のジュエリー
現代のジュエリーは、精密機械による均一な仕上がりが可能となり、ダイヤモンドの価値も数値で厳密に定義されるようになりました。
その結果、ジュエリーが工業製品のように“完璧”になる一方で、そこに宿る「人の手の温度」が、次第に見えにくくなっているように感じます。
もちろん、加工技術の進歩は素晴らしいことです。
けれども、その精密さと引き換えに、ジュエリーにとって大切な「何か」を置き忘れてしまったのではないか...
そう感じる瞬間があります。
ジョージアンスタイルのジュエリーは、現代とはまったく異なる価値観の上に成り立っており、単純に比べることはできません。
それぞれが大切にする、美しいと思う「価値の重心」が異なるのだと思います。
ジョージアンジュエリーが、時を経てもなお人々を惹きつけるのは、
完全さよりも、静かな余白と調和の中にこそ、美を見いだしていたからです。


今回の「Rose Cut Diamond Collection」は、2006年の作品を現代的に再解釈し、ジョージアンスタイルを新たな視点で再構築することで、約20年の時を経て、伝統的な技法と現代の感性が融合した新たな姿として生まれ変わりました。
当時、主に用いられていたシルバーに代えて、humでは、その時代の美意識を受け継ぎながらプラチナを用いています。
静謐なローズカットダイヤモンドの輝きを、より繊細に、そして現代的に引き立てるための選択です。
時代を超えて息づく美しさに、今のhumらしい精度と強度を重ねています。
光と影、動と静、表と裏。
私たちのデザインには、相反する要素が自然に融合しています。
その意図は「華やかさ」ではなく「優雅さ」にあり、すべてが完璧であることよりも、職人が理想に近づこうとする葛藤や、デザイナーの想いを大切にしているからこそ。
わずかな余白や陰影、その不完全さの中に、人の心に触れる美しさがあると信じています。
ジョージアン期のジュエリーが今も多くの人に愛され続けているように、この新しいコレクションも、多くの方のもとで長く輝き続けることを願っています。


【New Collection Rose Cut Diamond】
■発売日
2025年11月19日(水)
■取り扱い店舗
hum JINGUMAE atelier&shop
hum HANKYU UMEDA
hum ONLINE STORE



