
エンゲージリングにインダストリアルダイヤモンドを選んだ理由
こんにちは。
hum JINGUMAE atelier&shop の岩﨑(@ikumi_iwasaki)です。
新しい年を迎え、2026年最初のJOURNALとなります。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
新年早々、humにとって嬉しい知らせが届きました。
今回は、そのひとつをご紹介させてください。
「このコレクション、好きなんです。」
「エンゲージリングは、こんな感じがいいな。」
「今度、石を選ぶときに相談に乗ってもらえませんか。」
ここ1年ほど、職人・高野の言葉から、少しずつ、そして確実に“目的”と“理想”が形を持ちはじめていくのを感じていました。
長年お付き合いされてきたMさんへプロポーズをするにあたり、
エンゲージリングを考え、制作していく——
その過程を間近で見てきたからこそ、今回は高野へのインタビューを通して、この指輪が生まれた背景をお伝えしたいと思います。

インダストリアルダイヤモンドとは
岩﨑:
現在、humで取り扱っている「インダストリアルモンド(Industrial Diamond)」について、ご自身の言葉で教えてください。
高野:
工業用のダイヤモンドですね。
採掘される原石の中で、輝きよりも“硬さ”という特性を活かされてきたものです。
形や色、曇り方も全部違っていて、見ていると本当に同じものがひとつもない。
削りすぎていない分、その自然な個性が面白くて、「これを主役にしてみたいな」と思いました。
岩﨑:
整えすぎないからこそ、その石が歩んできた時間までも感じられますよね。
※ インダストリアルダイヤモンド
「Industrial=工業の」という名の通り、工作機械の刃物などにも使われる。


高野が選んだインダストリアルダイヤモンド
婚約指輪に選んだ理由
岩﨑:
婚約指輪という象徴的なジュエリーに、インダストリアルダイヤモンドを選択肢に入れた背景を教えてください。
高野:
プロポーズといえば、石の付いた指輪を箱に入れて、跪いて渡す——
そんなイメージを持っていました。
ただ、どうしても綺麗にカットされた貴石にしっくりこなくて。そこだけがイメージできず、ずっと曖昧だったんです。
そんな時に目にしたのが、インダストリアルダイヤモンドのコレクションでした。
形、色、曇り方、それに合わせた土台の見せ方が頭から離れなくなって、自然と惹かれていきました。
デザインについて
岩﨑:
一般的な婚約指輪に多いブリリアントカットのダイヤモンドと比べて、デザイン面で意識した点はありますか?
高野:
自然な、あるがままの石を主役として引き立てるために、地金の土台もあえて華やかに要素を盛り込んだデザインにしています。
素材をプラチナのみでまとめるのではなく、アームをグリーンゴールドとホワイトゴールドのコンビネーションにしたり、トップの取り巻きもプラチナだけでなくK22イエローゴールドを使ったり。
素材の重なりで、石の個性をちゃんと受け止められる土台にしたかったです。

技術面について
岩﨑:
制作の過程で、特に意識した点はありますか?
高野:
クンダンが特に重要な要素になります。
クンダンにすることで、腕の形や繋がり方など全体のバランスをどう取るかというセンスが問われます。
クンダンは、石の底面に鏡面仕上げのプラチナを敷き、原石が持つわずかな光を内側から反射させる技法ですが、
ダイヤの下に敷くプラチナをきれいな鏡面に仕上げるのは、他の地金に比べて難易度が高いんです。
さらに、その鏡面を保ったまま石を留め、最後の仕上げまで持っていくこと自体が、かなり神経を使う工程でした。










この指輪に込めた想い
岩﨑:
婚約指輪にあえてインダストリアルダイヤモンドを使うことで、どんな想いやメッセージを込めていますか?
高野:
人もジュエリーも、さまざまな個性があって、その時の気分や見られ方で、いくらでも変わっていけるところに魅力を感じます。
僕も彼女も「飾ることが好き」という点で繋がっているので、その楽しさを、ずっと忘れずにいられたらいいなと思っています。
この指輪を通して、そんな気持ちが伝われば嬉しいです。
完成して
岩﨑:
完成したリングを見て、いかがですか。
高野:
ひとまず、安心しました。
そして、「彼女に似合いそうだな」と思いました。
トップとアームが一体になったデザインは、本当にバランスが難しかったです。
あと、面白かったのが石だけで見ていた時と、リングとして完成した時では、雰囲気が大きく変わったことですね。
石を選んでいる時は小さいかなと思っていたけれど、存在感のあるリングに仕上がりました。


高野の小指とMさんの左手薬指がほぼ同じサイズで、自分の指にはめながら何度も確かめている様子
いかがでしたでしょうか。
完成したリングを手にしたとき、「彼女に似合いそうだなと思った」と話す高野の表情が、とても印象的でした。
ダイヤモンドの4Cでは測れないもの。
形や色、揺らぎが持つ個性に「彼女らしさ」を重ねて選び、作り上げたエンゲージリングです。
「誰が、誰のために作るのか。」
humが大切にしている問いが、確かなかたちで答えを持った瞬間だったように感じます。
インタビュー中も、普段の会話の中でも、高野はよく「面白い」という言葉を使います。
それは決して軽い意味ではなく、「惹かれる」「大切にしたい」という感覚に近いもののように思います。
ジュエリーや靴など、身につけるものにも彼なりの選び方があり、そこにははっきりとした拘りと個性があります。
きっとMさんも、そんな“面白さ”を持った人なのだろうと想像します。
人に対しても物事に対してもフラットな視点を持ち、冷静で飄々としていながら、決断すべきところでは迷わない工場長。
そんな高野が、今回ばかりはダイヤモンドを前に、珍しく悩む眼差しを見せていました。
Mさんの話をするときは、少し照れくさそうで、それでもどこか誇らしげで。
選び、考え、手を動かす制作の過程にも、その人柄が自然と滲み出ているように感じます。
これまで過ごしてきた年月と、構想から制作まで真剣に向き合ってきた時間、その時々の想いが、このリングの佇まいそのものです。
最後に。
高野くん、Mさん。
このリングとともに、飾ること、楽しむこと、そして変わっていくことを、これからも大切にしてくださいね。
改めて、心からおめでとうございます。





