from JINGUMAE vol.7~bespoke signet ring~
こんにちは、小西です。
hum JINGUMAE atelier&shopの風景をお届けする“from JINGUMAE”、第七回。
今回は、代表・貞清とJINGUMAE店長・古川から聞いた「シグネットリング」のエピソードをご紹介したいと思います。
ところで、シグネットリングがどのようなものかご存知でしょうか。
起源は古代エジプトにまで遡ると言われますが、主にヨーロッパの貴族が身分証明として身に着けていたもので、リングに紋章やイニシャルを刻み、重要な文書や手紙にはこれを用いて判を押しました。日本でいう印鑑の役割を担っていたのがシグネットリングです。
もちろん現代ではシグネットリングが何かの法的効力を持つことはありません。しかし、その芸術性や自己表現の意味合いには今もなおファンが多く、IDブレスレット等と並んで根強い人気を誇るジュエリーです。
歴史的に見ても紳士が小指に着用するイメージが強いものの、今では性別を問わず自由な着け方で愛されています。古代エジプトから続く文化が形を変えながら継承され、ファッションアイテムとして現代にも残り続けているというのは、なんともマニア心をくすぐられますね。
humでもかつてシグネットリングを制作していたことがあります。
(Men’s collection/生産終了)(BLAMINK別注/取り扱い状況はBLAMINKへお問い合わせください)
「署名と共に(あるいは署名代わりに)判を押す」という極めて重要な意味を持つシグネットリングは、長い歴史に目を向けながら本質的なジュエリーの在り方を表現し続けてきたhumにとって、避けては通れないアイテムだったのです。
さて、ここからが今日の本題。
ある日、hum JINGUMAE atelier & shopに一人の男性外国人が来店されました。
店長の古川がご対応していたところ、アトリエからふらっと出てきた代表・貞清と男性の視線がぶつかりました。
「あれ!?なんでここにいるの!?」
なんとその男性は、貞清が愛犬・次郎の散歩中に雑談をする仲の「散歩友達」だったのです。思いもよらぬ場所での遭遇に驚くふたり。
男性(以下、N氏)はご近所にお住まいで、よくJINGUMAEの前を通りがかるのだとか。
かれこれ2年くらい頭の片隅にhumの存在があり、小指に着けるシグネットリングが欲しいと思ったときに「あそこなら作れるんじゃないか」と思い付き、足を運んでくださったそうです。
「50歳になるから、かっこいいのが良いな」
そんなこんなで、散歩友達・N氏のシグネットリングを貞清が作ることになりました。
自分が作るジュエリーをN氏が選んでくれただけでなく、偶然だとしても記念すべき50歳の節目で任せてもらえたことは、貞清にとって忘れ難い記憶になったでしょう。よっぽど嬉しかったのか、自発的に製作途中の写真を撮っていました。
フリーハンドで刻まれた文字が良い味を出しています。文字の入れ方は、正の向きと反転させた向きの二通りがあるそう。
そして私が東京へ出張した際、たまたまご来店されたN氏にお目にかかって実物を拝見することができました。一から作っただけあり手の大きさに対してリングが理想的なバランスで納まっていて、大変お似合いでございます。
ビスポークのシグネットリングを纏ったN氏は、素敵で小粋な紳士でした。
少し話が逸れますが、貞清はしばしば社員にペンを贈ることがあります。
これは自身の実体験を元に、「人生の重要な場面には署名がつきもの。そういう時、世話になった人から自分の為に贈られたペンだと誇らしいし、その経験はずっと記憶に残る」と考えて続けている習慣なのだそうです。
N氏と貞清のエピソードにも、ここに通ずるものがある気がします。
今回のご縁は偶然が重なったものでしたが、自らの名前を表すシグネットリングのようなアイテムこそ、自分だけの為に作ってもらう。そしてものづくりを生業とするからには、そういうものを誠心誠意作り続ける。
これが理想的な在り方だなと思いました。
もしビスポークで作るシグネットリングにご興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、ぜひhum JINGUMAE atelier & shopまでご相談ください。
※シグネットリングは制作できる職人が限られており、個別のリクエストにお応えすることが難しくなってまいりましたため、現在は受注する期間と点数を限定させていただいております。(2023年4月追記)
今日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。