
The craftsman style vol.2
こんにちは。hum JINGUMAE atelier & shopの古川(@furukawa_jingumae)です。
ジュエリーづくりに携わる職人は、日常でどのようなものを身に着けているのでしょうか。
その選び方や組み合わせには、つくり手ならではの感性と美意識が表れています。
humのジュエリーを支える職人たちにひとりずつお話を伺い、個性あふれる人となりや、それぞれの”スタイル”に迫っていく。
そんな連載企画を「The craftsman style」と題しjournalで綴ってまいります。
職人:土屋悟志(35歳)
・入社:15年目
・担当している作業:鍛造、検品

■my first hum

土屋さんのmy first humはシルバーのチェーンブレスレットです。
そのいきさつを伺うと、hum JINGUMAE atelier&shopがオープンした際「アトリエ併設のショップだから、お客様から見られたときに職人が着けているといいかなと思って」という言葉が返ってきました。
私から見る土屋さんは、humの職人の中でも特に清潔感や所作の美しさが際立っていて、作業中の姿にさえどこか品を感じる方。
その立ち振る舞いは「見られること」を意識しながら積み重ねられてきたものだったと気づかされました。

■自分らしく仕上げること
humだからこそできるカスタムを施したいと、ダイヤモンドはブラウンダイヤに。
「それまでブラウンダイヤにカスタムした例は一度もなかったけれど、好みに仕上がる確信があった」と少し誇らしげに話してくれました。

ダイヤをブラウンにすることで土屋さんらしい”渋み”が宿りどこかクラシカルな印象に。
「オリジナルデザインへのリスペクトはありつつも、より自分好みに仕上げたことで、愛着が沸いている。」そう語る姿からは、自分自身のスタイルに合わせてカスタムすることでジュエリーとの関係性がより深く、特別なものへと育っていることが伝わってきました。
■受け継がれるもの


ゴールドのバングルは、代表・貞清から譲り受けた特別な一本。
ある日何気なく手に取って見ていたところ、「それ、あげるよ!」と声を掛けられたのだそう。
思いがけない形で手元にやってきたバングルですが、それ以来シルバーのチェーンブレスレットとあわせて毎日欠かさずに身に着けていると話してくれました。
長年使い込まれたゴールドの柔らかな艶と、日々制作に向き合う中で刻まれていく細かな傷。
そのどちらもが自然に重なり合い、土屋さんの手元ならではの空気感を作り上げています。
「受け継いだものも自分の時間とともに育てていく」
そんなhumらしいジュエリーとの関係性を感じさせるエピソードでした。
■身だしなみもものづくりの一部
「着るシャツによって合わせるネクタイは決まっている。」
そんな何気ないひと言からも、土屋さんらしい美意識の細やかさが伝わってきます。
中でも特に印象的だったのが、裏地に異なる柄の布が張り合わせられたネクタイ。
一見するとシンプルな一本なのですが、ふとした瞬間に覗く裏地に遊び心が宿っていて、そのさりげなさに土屋さんらしさを感じました。

聞けば、古い布を再利用してつくられているのだそう。
オモテから見える完成された美しさだけではなく、見えない部分にも意味や背景があるものに魅かれる感覚は、土屋さんのものづくりにも通じているように感じます。
そして土屋さんはアトリエの中で唯一ネクタイを締めて作業をしている職人。
ネクタイを締めることは仕事へ向かう為の大切なスイッチのひとつになっているようです。

■plus one item
「ブレスレットがようやく自分に馴染んできて、今ならいけるかもと思えた。」
そう話してくれたのは以前からずっと気になっていたという同シリーズのチェーンリングについて。
長く身に着ける中で、質感やボリューム感が少しずつ自分のスタイルに馴染み、自然と”次”を迎え入れられる感覚が生まれたのだそう。
新しいアイテムを迎え入れるというよりも、今の自分に必要なピースが自然と繋がっていくような感覚。。。

土屋さんの持つ、落ち着いた”渋み”にチェーンリングならではの少しキャッチーな存在感が絶妙に重なっていて、そのバランスがとても素敵です。
ジュエリーそのものの魅力だけではなく、“その人らしさ”によって完成していくスタイリングの奥深さを改めて感じさせてもらいました。
■時間をかけて向き合う
土屋さんの趣味は「バイク」。
最初は原付から始まり、次第に「もっと大きなバイクに乗りたい」という気持ちが強くなって中型免許を取得。
ビックスクーターを経て30歳の時に迎えたのが、現在の愛車である1977年製のHarley-Davidson。
長い年月を経た車体ならではの重厚感や佇まいはもちろん、自分好みに少しずつカスタムしていけるところにも強く惹かれたのだとか。

けれど土屋さんが本当に魅力を感じているのは、むしろ”一筋縄ではいかない”部分。
古いバイクだからこそ定期的なメンテンスが欠かせず、手を掛けなければ機嫌よく走ってくれない。それでも、その手間を含めて愛着へと変わっていく感覚があると話してくれました。
効率や便利さだけでは測れない、不完全さの中にある魅力。
時間を掛けて向き合うことで、自分だけの存在になっていく感覚。
その価値観は、素材と向き合いながら一点一点を仕立てていくhumのものづくりとも、どこか深く重なっているように感じます。



「ゆっくりいこうよ~という思いを込めてつけた」というカメは既製品に手を加えて制作。大型バイクのヘッドライトに鎮座するその姿がとてもかわいいですね。

休日には山へツーリングに出掛けることも多く、訪れた土地で美味しいご飯を食べるのも楽しみのひとつ。
自然の中を走りながら気分を切り替える時間が、土屋さんにとって大切なリフレッシュになっているようです。

訪れた秩父で食べたという手打ちそば。絶景の中でいただくお蕎麦は絶品ですね!
■手をかけることで生まれるもの
インタビューも終わりに差し掛かったころ、
「自分で言うのはダサいけど、自分でつくったジュエリーには全部に愛着があるから。楽しんでくれるのかな?って思う」と、土屋さんがぽつりと話してくれました。
普段は黙々と作業をし、あまり多くを語らない彼。
だからこそ、その言葉はとても意外で同時に強く心に残りました。
土屋さんは「鍛造」という、自分の手で金属の塊を叩いたりのばしたりしながら形をつくり上げていく技法を得意とする職人です。
素材と向き合い、ひとつひとつ丁寧に”作り上げていく”からこそ湧き上がる想いなのだろうと感じました。

何事にも真摯に向き合い、とことん突き詰めていくその姿勢。
だからこそ、土屋さんにはhumチームからの厚い信頼が自然と集まっているのだと感じます。
将来の夢は小学校の用務員さんか幼稚園バスの運転手さんだそう。
あまりに想像ができすぎて思わず笑ってしまいましたが、そんな肩の力の抜けたところもなんだかとても彼らしいなぁと感じました。
今回のインタビューを通して、ものづくりに対する姿勢だけでなく、人柄の魅力にも改めて触れられた気がします。
そして少し触れた「土屋の鍛造」については、また次の機会にたっぷりとご紹介できればと思っています。お楽しみに!
最後までお読みいただきありがとうございました。




